国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISH
MENU

修了生・在学生の声&活動
Voices of Graduates and Students & Activity

修了生 Graduates

「試行錯誤」の学びを経て得た2つの財産

田村 和輝さん
Mr. TAMURA, Kazuki

社会文化科学研究科 組織経営専攻

2013年3月修了

同族会社の行為・計算否認規定の現代的意義―中小規模の同族会社等の閉鎖的特性を踏まえて―

私は現在、県内外のクライアントに対して財務とマーケティング活動の安定継続を主軸とする経営計画の立案から、その実施を月次でサポートする業務に従事しています。これは、企業の財務数値から得られる粗利益を改善するために、効果的と考えられるマーケティング施策を経営者に提案するものです。いくつかの施策を立案し、財務面を考慮しながら優先順位を付けた仮説検証を行い、ベストと結論付けた施策を経営者面談や幹部会議、全体会議を通じて組織内理解を醸成しながら継続実施することを支援することを業務としています。これを一言に集約すれば、「正しい試行錯誤の支援」という言葉で表すことができます。

中小企業を取り巻くビジネス環境が刻一刻と変わり続ける中で、安心して事業を継続してゆくには、リスクを含む試行錯誤を避けて通れません。実際には財務の観点から、この試行錯誤を思いのままに実施できる場合は、そう多くありません。

財務面の制約を意識しながら、より安全性に配慮して仮説検証を行い、課題解決を図ることが「正しい試行錯誤」の要諦と考えます。そして、それに取り組むための土台を創ることが出来たのは、社会文化科学研究科での学びが大きかったと実感します。

私の場合は、経済学部を卒業し、一定期間の実務経験を経た後に入学したので、ともすれば、思考することなく日常的・経験的に受容してしまう実務現場の出来事に対して、科学的・論理的にアプローチする姿勢や習慣を身につけることが出来たことは、大きな収穫でした。

経営理論を説くビジネス書の多くは理論や実践の「エッセンス」が抽出されたものです。「エッセンス」は重要ですし、便利な情報ですが、中には、そのビジネス書の著者の意図が色濃く反映された物もあるでしょう。大学院での学びは、これらの情報の原情報に直接触れることから始まります。

―思考すべき問題点を、目の前の事象から適切に抽出しているか。

―目の前の情報の採用可否、どのように取込み、どのように判断に活かすか。

―予測が付かない現状や将来に向けて、先人の原体験や原記録を参考に出来ないか。

これらの「思考」する姿勢が、現在自身の業務において様々な地域、業種、段階、規模、組織体制のクライアントに対して正対するための土台となっています。そして、社会文化科学研究科での研究生活で得ることが出来た私の「内面的な財産」となっています。

勿論、大学院での研究は、「生きた学びを獲得できる喜び」や「論理的思考力の成長」を得られる対価として、努力が求められ、決してラクでは無かったことが今でも鮮明に思い出せます。それでも、ラクでは無い様々な課題解決のトレーニングを楽しみながら取り組めたのは、それをサポートしてくれる先生方や、世代や立場を超えた同窓生の存在があったからです。労苦を共にした絆は、大学院を修了した今でも私のかけがえのないもう一つの財産となっています。

企業経営の支援を業務とする人間は、経営判断の全結果責任を負う経営者に寄り添って、課題に対する助言をより丁寧に、より誠実に行わなければなりません。財務数値は、単なる冷たい数字の羅列ではなく血の通ったお金であり、社員の努力や思い、そして顧客の生活の在り方を表現したものであると考えています。

組織経営専攻において理論や実践の原情報へ誠実に向き合う環境に身を置けたことで、日々の業務においても情報を丁寧に扱い、その情報の背後にクライアントの業務に携わる人々の想いや生活が常に存在することを意識して、判断に誠実であれるよう取り組もうとしています。

私の原体験が皆様の進路判断の一助となれば幸いです。

 

戻る