国立大学法人 岡山大学

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修了生・在学生の声
Voices of Graduates and Students

修了生 Graduates

研究成果を自社職場に反映したい

井上 朗弘さん(関西防水工業株式会社・代表取締役社長)
Mr. INOUE, Akihiro

社会文化科学研究科 組織経営専攻

2018年3月修了

職別工事業の技能労働者等における人事考課制度の実証的研究 ~岡山県下中小企業を対象とした諸調査に基づいて~

私は、会社の代表として50名程度の技能労働者を抱える職別工事業を経営しています。彼・彼女らが様々なトラブルを起こしたり、思い通りに仕事ができなかったりすることに不満と苛立ちを感じつつ、彼・彼女らの思考・発言、および行動について、いつも一方的に嘆いていました。また、日々の工事をこなしていくために、彼・彼女らのわがまま(と思っていた)を見過ごし、我慢している自分にもストレスを感じていました。それらにうまく対応でき、解決がはかれれば、企業の生産性も向上し、自身のストレスも減る、と考えていました。

そのような状況下、約15年間、企業経営はしてきたのですが、経営について、とくに学問的に学んだこともなく、学ぶ気もなかったのですが、その一方で、マンネリ的に経験と勘に頼ってばかりいる自社経営のやり方には限界を感じ、日々、浅慮していました。その頃、MBAを取得した友人経営者から「学ぶ(学び直す)」ことを強く勧めらました。今、考えてみると、私の思考の浅慮さを心配しての助言だったのかもしれません。

大学院に入学する前も、入学後もしばらくは「建設業は(他の業種に比較して)特殊だ」というフレーズに囚われていました。とくに「特殊」というキーワードには呪縛されていたと思います。しかし、講義を受け、自身の論文執筆のために研究を進めたりしていくにつれ、よく建設業で見聞きされ、(他の業種とは異なって)特殊なことと考えていたことが、実はそうではないのでないか、と考えるようになりました。見方が少し変わったわけです。

1ヶ月に2回開催されるゼミにおいて、指導教員からは、よく「なぜここ(大学院)に来ているのか。何が問題なのか。それは、(単なるあなたの)不平、不満ではないのか」と繰返し言われました。ここでの気づきは、大学院は、企業で日常起きている多様な問題について、処方箋や即効・効率的な解決方法を教わり、考える場所ではない、ということです。さらに、科学とか学問は、それらについて親和性は弱いということです。しかし、大学院は、物事の本質に知的に挑み、根源的な問いを立て、その一つの解をひねり出す場であることが分かりました(笑)。同級生は分かりませんが…。

ですから、大学院の修了前には、上述の悩み等についても、それほど問題とは感じなくなっており、私自身の思考の変化を感じました。社長自らが、彼・彼女らを一方的に批判し、嘆くのは良いが、それでは、まったく何にもならない、ということに気付いたわけです。修士研究の対象は、人事考課です。アンケート調査やインタビュー調査では、「人事考課も人事評価も同じ」などと考えている中小企業の多さに驚きました。しかし、振り返って、自社を考えると、正確に、また充分に、彼らの経常の仕事ぶりを見て、評価できていないと強く感じました。修士研究の成果を何とか自社職場に反映し、使用することの必要性を強く感じるようになりました。

上記以外に、来て良かったと感じることに、文章の書き方があります。日常の職場では、体現止め、あるいは省略を多用した文章によるスピード感です。しかし、これが実は勘違いで、とても伝わりにくいことが理解できました。学術的な記述における作法(=「科学する」における一般・普遍化に通ずる。そして言語使用の一貫性)は、誰でも分かるように正しく記述することであり、文章は自己を丸裸にするという指導教員の言は、目から鱗でした。当院ゼミは、文章の字体・フォントの大きさ・余白・行数・1行当たりの文字数、まで指定されており、パワーポイントの作成も同様です。修士論文の発表前は、シナリオを書き、ストップウオッチを持って練習したことも、今では良い思い出です。結局、修士論文は、書き直しの連続で、序章と結章については、十数回書き直しました。しかし、これらの作業が、仕事にはとても役に立っています。

最後に、私は長期履修制度を活用させていただき、3年間通学しましたが、いろいろと支え合ったゼミの仲間や同級生、夜にも関わらず大学院に出向く私に協力してくれたすべての従業員と家族にとても感謝しています。 大学院の修了はゴールではなくスタートだと思っています。これからも問題の本質を見極め、良い企業をつくるために経営力を高めていきたいと思っています。

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